誰も書かなかったMARIO
スーパーファミコンの時代の攻略本は面白かった!
とくに小学館発売の攻略本には攻略記事とは別に面白い記事が載っていたりしていた。
例えば小学館のスーパーストリートファイター2の攻略本には性格診断があって、
性格診断の結果でどのキャラを使うのが向いているか調べるものがあったが、
ページをめくって結果を見ると全部ザンギエフの色違いっていう
(Aの貴方は黄ザンギ! みたいなやつ)
とても面白いコラムがあったものでした。
今日紹介するのは「スーパーマリオワールド」の攻略本にある記事です。
しかもこれ、「任天堂公式」の、本家本元の攻略本。
お堅いイメージのある任天堂ですが、これを公式に乗っけるとは…と貴方のイメージが変わるかもしれません。
以下、しりあがり寿著の「誰も書かなかったMARIO ―道半ばに倒れた仲間達―」から抜粋です。
…任天堂から苦情がきたら削除します。
「誰も書かなかったMARIO」
毎回毎回、胸のすく冒険で僕らを熱狂させてくれるスーパーマリオ!!
私はついに『4』の冒険を終え、くつろぐマリオへの単独インタビューに成功した。
素顔のマリオはただの陽気なオッサンではなく、死んでいった仲間たちに涙する
やさしい心の持ち主だった。
傷だらけの足は冒険者の勲章
私は『4』の冒険を終え、調整中のマリオを彼のトレーニングルームに訪ねた。
マリオは大きいままでサウナに入っていた。
カメを何千匹もするつぶした足はたくましく傷だらけで、顔には心なしか疲労の跡がみえた。
「マリオさん、『4』の冒険ごくろうさまでした」
マ「やあ、ありがとう」
「スーパーファミコンになって初めての冒険はいかがでしたか…?」
マ「基本は同じだからね。でも景色が良くなったんで冒険も楽しかったよ」
「今回もまた大勢の仲間を亡くされましたが…」
マ「そうなんだよ…(泣く)」
「よろしければ彼らの思い出など…」
「このクソカメー!」
マ「最初の犠牲者はオレ達の間でノボルと呼ばれてたヤツだった。
最初のヨースター城の金アミのところだったかな…。
なれない金アミなのに無理してコインをとろうとしてね、バランスをくずしたとたん
体中をカメに食いつかれてマグマの中に落ちてしまった」
「お気の毒に…」
マ「最期の言葉は『このクソカメー」だったよ」
スイッチ押しのヒロシ ドーナツ平野に散る
「ドーナツ平野のコース3でもたくさんの犠牲者がでましたね」
マ「ああ…あそこはゲーム有数の難所だった。
一個中隊くらいのマリオ達が死んだかもしれん…
谷の底には息絶えたマリオ達でいっぱいだった。
あの中にタカシやヒロシもいたんだ。
ヒロシは『あのスイッチをOFFにできるのはオレサマだけだ』と言って
ジャンプしたとたんに、カメに頭をわられた」
「情けないですね」
マ「本当に戦った者にしかあの苦労はわからんさ…」
マグナムキラーの恐怖
「そう言えば確か、砲弾にやられたマリオがいましたね」
マ「ああ…マサルのことだな…」
「今どき、砲弾にやられるのは珍しいのでは…」
マ「あのときマサルは、とらえたカメを誰かに投げつけようとして砲弾への注意を怠ったんだ。
なんといってもカメの甲ら投げはマサルの十八番だったから、
何としてもいいとこをみせたかったのかもしれないな…」
ジャンプ力がありすぎて…
「ドーナツ平野のお城も苦労なさいましたね」
マ「ああ…大勢の仲間を失ったよ。
ヨシオが壁にはさまれたのは悲惨だった…。
やつはジャンプ力がありすぎたんだ」
「そういえばヨシオさんは…」
マ「そう…ヨシオはバレーボールの全日本代表だった。
マリオになどならなければ、バルセロナのオリンピックでも活躍してただろうに…」
孤独な戦場に一人
「ところでみなさん、画面には一人ずつしか出ていらっしゃいませんが」
マ「我々は画面の左側からゾロゾロとついてってるのさ」
「そうでしたか…。ところでバターブリッジの上下するキノコでは…」
マ「ああ、たくさんの仲間がタイミングをとれずに谷底に落ちたよ…。
いまでもバターブリッジのキノコには、しがみつこうとしたマリオ達のツメ跡が残っているはずだ」
白い光につつまれて君は1UPする
「以前からお聞きしてみたかったんですが、1UPする時のお気持ちはどんななんでしょうか」
マ「そりゃもう緊張するさ。
一瞬まわりが明るくなったかと思うと、カメだらけだもんな…」
命の綱は足の裏の強さだけ
「生き残る秘訣というのは…」
マ「特にないが、足のウラだけはいつもキタエているよ。
我々マリオは光線銃やバクダンのよーな武器らしい武器は持っていない。
足のウラでカメをふむだけだからな。
それに頭もキタエてるよ。
キタエ方がたりないと、コインをとろうとしてブロックに頭つきを
かましたとたん脳震盪になることがあるからね」
「本日は長時間ありがとうございました。最期に何かメッセージはございますか」
マ「我々マリオは永遠だということさ。
もし『5』がスタートすればオレはワンステージもクリアできずに死ぬかもしれん。
しかし後に続くマリオ達が、次から次へと育ってるんだ。
今は学生だったり公務員だったりする連中が、ピーチ姫のためにマリオに身を投じてくれる」
「良いマリオになるにはどうしたら良いのでしょう」
マ「ヒゲが濃いことだな。これはピーチ姫の好みなんだよ」
「なるほど」
公式ガイドブックでこれってすごくない?
ホント小学生のころ、この記事が大好きでした。
今趣味で漫画を描いているのも、こういった想像力を膨らませて作った
面白い作品があるからといっても過言ではありません。
僕の漫画のルーツとも言えるでしょう。
戻りんぐべい